しぐなすの創作物置小屋

小説・現代誤訳・詩歌・漫画などなど

2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

西八条の春の夜の思い出

とある春、中宮(のちの建礼門院徳子さま)が西八条のご実家においでになったときのこと。中宮のご兄弟、甥御さんたちもおいででした。 花の盛りに月の明るい夜でした。そのような夜を、ただで明かせましょうか。権亮・維盛さまは漢詩の朗詠と笛、経正どのは…

西行、人造人間をつくるの巻

こんばんは、西行法師です。 これは私が高野山の奧に住んでいた時分の、不思議なお話です。 それまでなかよくやっていた友の聖が、突然京にのぼってしまいました。私はたいそう寂しい思いをしました。彼とは花や月をともに語ってきたので、またそのような友…

花の行方

むかし、聖ありけり。暮れ方、高野山の奧をすぎゆくほどに、春の雨ふりきたり。そこもとの桜、花咲きゐたるに、その陰に足に傷をおひたる娘、震へつつをりけり。高野山、女人禁制なれば、あやしきことなるに、花散りかかる娘の姿いとはかなげに見えたり。聖…