しぐなすの創作物置小屋

小説・現代誤訳・詩歌・漫画などなど

2007-01-01から1年間の記事一覧

キレ神様と貫之

ある日のこと。紀貫之は玉津島神社を目指して馬を駆っていました。和歌の道ひとすじの貫之でしたが、和歌の神様である玉津島神社へはまだ参ったことがありませんでした。このままだとモグリだと言われかねないので、とっとと参ってしまおうと思い立ったので…

「小野とはいはじ」のことなど

Aさん(仮名)「あのさ、業平朝臣が女の人をさらっていったっていう話が『伊勢物語』にあるじゃない」 長明「女の人が鬼に喰われたってやつね。でも実は女の人の兄ちゃんたちが取り返したって話でしょ」 Aさん「その時に兄ちゃんたちは怒りを抑え切れなくて…

ヘタレな坊さん・蓮花城の話

以前、蓮花城(れんげじょう)という名の知れたお坊さんがいた。友人の登蓮法師は何かとめんどうをみていた。蓮花城はある日、登蓮にこう言った。 「だんだんからだが弱ってきました。もう長くありません。極楽浄土に行けるように入水往生したいと思います」…

「ますほの薄」のことなど(ブログ仕立て)

以前、Aさん(仮名)の家で数人の知り合いと談笑していたら「ますほの薄」の話になりました。 「『ますほの薄』ってさ、どんな薄なの?」 「わしゃ知らんけど…。なんでも摂津の国の渡辺というところに、詳しい坊さんがおるとかおらんとか…」 同席していたお年…

長柄の橋の木切れ争奪戦

昔、康資王母が永縁僧正を招いて仏供養をおこなった。永縁へのさまざまなお布施の中に、紫の鳥の子紙に包んである物があった。開けてみると 朽ちにける長柄(ながら)の橋の橋柱法(のり)のためにも渡しつる哉 と書いてある。包んであったのは古びた木切れ…

えらい坊さんが鯉を助けて恨まれた話(ネット語仕様)

あるえらい坊さんが船に乗って琵琶湖を渡っていると、網船で大きな鯉を取っている人がいた。鯉はまだ生きて跳ねていたので、坊さんは憐れんで、着ていた小袖を脱ぎ鯉と交換して湖に放してやった。 その夜のこと。 坊さん「今日は(・∀・)イイ!ことしたなっ。一…

海賊が法師になった話

今日はひとつ、わしの昔話を聞いてくれ。いや、自慢話というほどのことでもない。今はこうして摂津の国で仏道修行にいそしんでおるが、この道に入るきっかけとなった事件のことじゃ。 わしは若い頃、結構な身分だった。着る物、食う物に満ち足りて、夜昼とも…

越地の山伏、少年の命を助けるの巻

これは私こと西行が越の国へ修行に行った折のお話です。 甲斐・信濃には雪が降る時節、峻険な山々を越えての道行でした。一人の寂しさが心に沁みて涙をこぼしたものです。 ようやく越の国への道を行きますと、山のきわにいた山伏と少年が私の目をひきました…

俊頼VS基俊バトル in源国信家歌合 六番の巻

==時は康和二年四月二十八日、宰相中将国信卿の家で歌合が開催された。これはその六番、「後朝」のお題での源俊頼と藤原基俊の勝負である。== 六番 左持 俊頼朝臣 契りありてわたりそめなば角田川(すみだがは)かへらぬみづのこころともがな 右 基俊 月…