現代誤訳
「君待つと閨へも入らぬまきの戸にいたくな更けそ山の端の月 式子内親王」【現代誤訳】 お部屋にも入らずドアの外で待つ 彼がくるまで月よ沈むな
「来むと言ふも来ぬ時あるを来じと言ふを来むとは待たじ来じと言ふものを 坂上郎女」【現代誤訳】 「行くよ」って言っても来ないあんたなんか待っちゃいないわ来ないんでしょう
「いかにせんかくとは人に言ひがたみ知らせねばまたしる道もなし 京極為子」【現代誤訳】 このきもちなかったことにしたくないだけどいえない好きですなんて
昔、ある男に仲のよい友人がいた。二人は片時も相手を忘れず、互いを思い合っていたが、友人が遠い国へ行くことになり、男はつらい思いで見送った。 しばらくしてから、友人が男に手紙を書いた。 「会えなくなって、あきれるほど月日がたったね。あなたに忘…
俺、心覚っていう坊主なんだけど、俺が賀茂神社に籠もっていたとき、神官の政平ちゃんがよく遊びにきてたんだよ。あいつ胡竹(こちく)っていう外国の竹でできてる笛が得意だから、それ持ってきてさ、よく歌とか作ったり合奏したりして楽しんでた。 隣に籠も…
ある男が 「こんなに逢えないなんて、もうオレ、死んじゃうからね」 と女に書き送った。女は シャボン玉なんか 消えたきゃ消えればいいのよ 残ってたって 首飾りにもできないんだからと返信した。 「オレってシャボン玉程度なの? 舐められてるのかな」 男は…
<Aさん(土佐・室戸の津住人)の証言> あそこにお堂があろう、津寺というお堂なんじゃが、ほれ、軒のところがちょっと焦げちゅうがや。それにはこんな訳があるんがや。…… もう何年たつか、あるとき、野火があってな。このへんの山が焼けたことがあったがや…
あれはたしか、わしが二十四、五歳だった時のことじゃよ。もっと若い頃には、大きな寺の律師(えらい坊様のことじゃ)の弟子だったんだが、そこを飛び出しての。それからは修行を積むために各地を巡っていた。ところが、はやり病にかかって、寝込んでしまっ…
遠い昔のこと。山科は四の宮というところに住まう権兵衛という者が、地蔵菩薩像を作った。しかし開眼供養、いわゆる魂入れもしないで櫃に入れ、奥の部屋にしまいこんだ。そして日常の雑事にまぎれて忘れてしまい、三、四年くらい過ぎてしまった。 ある夜、権…
「アハハハハ、愉快愉快」 山の中に嬌声が響く。 人はもちろん、鳥も獣もいない山の中である。男がたった一人でごちそうに囲まれて酒盛をしていた。留志(るし)という金持ちだった。 「誰もいないところでうまい物を食い、酒を飲む。こんな愉快なことはない…
逢魔が刻の、薄闇がネットリと沈む時分になると、夫はいつもどこかしらへ出かけるのでございます。 「それでは行ってくる」 そう言って、行き先も告げずに出て行くのでございます。 「お気をつけあそばして」 わたくしはニッコリとほほえんで見送るのでござ…
ブッダ誕生前夜。−− ブラインドを指で広げ、その隙間から下界を見やる男の、鋭い眼光があった。眼光は遥かむこうの獲物をとらえていた。男は紫煙をくゆらしながら、その眼をふいに細めた。そしてにやりと笑った。−− * * * ヒマラヤは雪に閉ざされていた。…
昔むかしのある夕暮れ時、山の中の細道を一人の老人が杖をつき、よぼよぼと歩いていた。深いシワが刻まれた顔は疲れ果てている。やせ細ったからだに精気はない。 道の傍らに粗末な小屋があった。老人はよろよろと駆け寄り、扉を叩いて助けを求めた。 「もし…
『中国名詩選 中』(松枝茂夫編、岩波文庫)より(※本を参考にして、しぐなすが自分の言葉で現代誤訳しました)
ぼくは ゆうめい かじんの 能因てんてーの じょしゅの 勧童丸 でつ。 きょうは 能因てんてーの しろい こなの おはなしを したいと おもいまつ。 ある日 てんてーは 兼房おぢたんの おうちへ いきました。ぼくも いっしょに いきました。 出ぱつするときに …
ぼくは ゆうめい かじんの 能因てんてーの じょしゅの 勧童丸 でつ。 きょうは 能因てんてーの せきららな かこの おはなしを したいと おもいまつ。 都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関 能因 これは 能因てんてーが みちのく ひとりたびを した…
ぼくは ゆうめい かじんの 能因てんてーの じょしゅの 勧童丸 でつ。 きょうは 能因てんてーの いちずな あいの おはなしを したいと おもいまつ。 能因てんてーは 伊勢 とゆう おねいさんが だいすきでつ。伊勢おねいさんも かじん でつ。しかも びじん で…
ぼくは ゆうめい かじんの 能因てんてーの じょしゅの 勧童丸 でつ。 きょうは 能因てんてーが ときのぶ とゆう おじたんと はじめて あったときの おはなしを したいと おもいまつ。 「節信(ときのぶ)殿、初めてお会いした記念に、お見せしたいものがありま…
ぼくは ゆうめい かじんの 能因てんてーの じょしゅの 勧童丸 でつ。ぼくわ だいすきな 能因てんてーの ことを かきたいと おもいまつ。 能因てんてーは いよのくにの えらい おじたんに ついて いよのくにに いきました。いよのくにと ゆうのは しこくに あ…
昔、通清(みちきよ)という役人がいたそうです。歌を詠み、源氏物語や狭衣物語などを暗誦して、花見だ、月見だと風流をつくしていました。 ある日のこと、後徳大寺左大臣殿が通清に「これから仁和寺で花見をするんで、必ずいらっしゃいね(はぁと)」とお誘い…
数寄者Aさん(仮名)が「なんと、あの超有名な小野道風直筆!」というふれこみの和漢朗詠集を持っていました。 それを聞いた一般人Bさん(仮名)が「あの〜、ちょっと質問してもいいですか…。そういう言い伝えに根拠のないはずはございませんでしょうけど…。藤…
古歌鑑賞講座の時間です。アタクシ、百人一首の「うかりける人を初瀬の山颪よ」でおなじみの、源俊頼です。よろしかったらトシちゃんと呼んでください。 あまの河あさせしら波たどりつつわたりはてねばあけぞしにける (古今 秋上 177 紀友則) これは、牽牛が…