しぐなすの創作物置小屋

小説・現代誤訳・詩歌・漫画などなど

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

400字小説「浅い夢からさめてしまっても」

短歌題詠 038:明日

明日からはがんばるつもりとりあへず今日は英気を養ふつもり

400字小説「ひるがほの仄かににがし」

短歌題詠 037:とんかつ

とんかつよりごはんの方がうまかったとんかつ屋さん今はなき店

短歌題詠021~036

021:窓 ぬすみぎきすきぬすみよみだいすきでよそんちの窓のぞくのもすき022:素 頑張って生きているのにわがからだすり抜けてゆく素粒子どもよ023:詩 これはあれドレミファソラシ詩ではなくまして死でなく口からでまかせ024:きらきら きらきらとしているもの…

短歌題詠011~020

011:イオン 衣手のマイナスイオン山の井のあかぬ別れも健康によし012:突破 絵馬の字のいびつなれども右上がり「難関突破合格祈願」013:愛 人間という名の猿に神のeye・愛・アイアイもおさるさんだよ014:段ボ−ル 段ボールの束の乱れて道にありクレマチスあを…

短歌題詠001~010

001:月 特急がプラットホーム過ぎ行けば二月の風は光を帯びて002:輪 輪投げの輪かさなりてあり そのなかに天使の輪などまじりをらむか003:さよなら 私から言ってあげるわ「さよなら」と 桜はらはらこぼれる前に004:木曜 木曜は燃やすゴミの日水曜の生ゴミ火…

200字小説「君をこそ待て」

えゝ、薫子さんとはあの丘の上で別れました。月の出を待つとおつしやつて。 「だつて、お月見は明日でせう?」と私が尋ねると、貴子さんが、 「違ふわよ。いとしの君を待つのよね」と訳知り顔におつしやつて、につこりとなさつた薫子さんの頬はバラ色に輝き…

200字小説「二条橋」

「なんで二条橋なん。ここ見えへんのに」と、橋のたもとで浴衣姿のマミは言った。 「ちょっと通るだけ」と僕は曖昧に答えた。人生初デートの苦い思い出がここにある。 送り火を見に来たのはいいが、涼子も僕も地方から出てきたばかりで何も知らず、人混みを避…

200字小説「酔芙蓉」

久しぶりのゴロちゃんとの酒。四十年、いや五十年ぶりか。瓢の徳利はこの料亭の名物だ。庭には見事な酔芙蓉。隔たった時間もどこへやらで、ヨウコちゃんの笑顔を思い出す。空から見ていてくれるだろう。いろいろあったが、恋敵だった俺達は彼女の倍以上生き…