しぐなすの創作物置小屋

小説・現代誤訳・詩歌・漫画などなど

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

無人島練習

整形外科のリハビリ

掌編小説「ママ」

「ママ、どこへ行くの?」 車の助手席にもたれ、男の子は尋ねた。三歳にしては小柄で痩せている。外はときおり風花が舞っている。 「とても美しいところよ」 ハンドルを握っている母親は、微笑んだ。 「お腹すいたよ」 「帰ったらシチューを食べようか」 「…

掌編小説「オニコ」

自分の名前が嫌いだった。「鬼塚さやか」。名字がなんだか怖いのが気に入らない。 下の名前が私の世代にはありふれているのも、全部ひらがななのも、気に入らない。 高校生の時、同じクラスにあと二人「サヤカ」がいて、一人は「沙也加」で「さやか」と呼ば…

現代誤訳「ジェラシイ?心覚」(『千載和歌集』より)

俺、心覚っていう坊主なんだけど、俺が賀茂神社に籠もっていたとき、神官の政平ちゃんがよく遊びにきてたんだよ。あいつ胡竹(こちく)っていう外国の竹でできてる笛が得意だから、それ持ってきてさ、よく歌とか作ったり合奏したりして楽しんでた。 隣に籠も…

現代誤訳「消えたきゃ消えれば?」(『伊勢物語』より)

ある男が 「こんなに逢えないなんて、もうオレ、死んじゃうからね」 と女に書き送った。女は シャボン玉なんか 消えたきゃ消えればいいのよ 残ってたって 首飾りにもできないんだからと返信した。 「オレってシャボン玉程度なの? 舐められてるのかな」 男は…