しぐなすの創作物置小屋

小説・現代誤訳・詩歌・漫画などなど

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

仄聞伝説(ほのぎきでんせつ)「数学者と黒い天使のお話」

昔むかし、外国のお話です。 円周率の計算に取り憑かれた数学者がいました。彼は毎日、朝から晩まで、円周率の計算をしていました。 ろくに食事もしなかったものですから、元々病弱だった彼は、まだ四十にもならないのに病気になってしまいました。それでも…

「言い訳」

「#小説」というタグをつけるのは、「これはフィクションです」という宣言です。それ以上でも以下でもありません。僕は僕の書くものがほんとうに「小説」なのかどうかわかりません。けれども「物語」というには、僕の書くものは短すぎる気がしますし、「おは…

掌編小説「白花サルスベリの家」

駅の方へ行く道に、門口にサルスベリが植わっている家がある。夏になると赤ではなく、白い花が咲く。私は勝手に「白花サルスベリの家」と呼んでいる。 梅雨の晴れ間の午後だった。駅前のスーパーへ行く途中、その家の古びたブロック塀の前で、老人が何か話し…

帝釈天の事件簿・お地蔵君を救え!

遠い昔のこと。山科は四の宮というところに住まう権兵衛という者が、地蔵菩薩像を作った。しかし開眼供養、いわゆる魂入れもしないで櫃に入れ、奥の部屋にしまいこんだ。そして日常の雑事にまぎれて忘れてしまい、三、四年くらい過ぎてしまった。 ある夜、権…

掌編小説「コワモテ書店」

もう十年以上前、女子高生だった私は、樋口一葉に興味をもった。教科書に載っていた「たけくらべ」を読んだのがきっかけだった。 友達はライトノベルや軽めのミステリーを読んでいて、一葉には見向きもしない。 「樋口一葉って古文じゃん。読む気がしない」 …