しぐなすの創作物置小屋

小説・現代誤訳・詩歌・漫画などなど

「未来へ行った話」

 これは俺が未来へ行って帰ってきた時の話。自転車型のタイムマシンに乗って……どういうわけで乗ることになったのか、それはまたいずれ語るとして、とにかく四日後の未来へ行ったんだ。
 三日後に苦手な算数のテストがあるので、その結果を四日後の自分に聞きたかった。たぶん結果は悪いだろうから、テストがどんな問題か知りたい。
 四日後の世界に着くと、自分を探しに学校へ行った。忍び足で教室まで行って廊下から聞き耳を立てると、すすり泣きの声が聞こえる。一人ではなく、みんな泣いているようだ。いったい何があったんだ。
 鬼瓦というあだ名の山田先生が声を詰まらせながら言った。
「テストに遅れそうだったから、焦って横断歩道のないところで道路を渡ろうとしたそうだ。そしてトラックに……。テストなんかより命の方が大事だろ……。なんで死んだんだ、北村ー!」
 北村って、俺の名前じゃん……。
「ウワーン」
 いつも俺をからかってばかりのカメ子が号泣すると、みんなも号泣した。
 俺はまさかと思って、窓から中を覗いた。
「キャー、北村君の幽霊!」
 女子の一人が悲鳴を上げ、教室は大パニック。
 俺はあわてて逃げ出した。
  *  *  *
 元の世界に戻ってきた俺は、テストの日、お腹が痛いと言って学校を休んだ。交通事故には合わずにすんだ。一週間たった今もピンピンしている。
 あの恐い鬼瓦や、憎たらしいカメ子が号泣していたのは意外だった。鼻の奥がキュンとした。
 でももうタイムマシンには当分乗りたくないなあ。


※『作文力ドリル 作文の基本編小学高学年用』の練習問題「私は未来に行きました。」を書いてみました。「500字程度」だったのがオーバーして800字になってしまいました。